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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)9343号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(三) 原告会社

(1) 丙車破損による損害 金四九万五九〇円

<証拠>によると丙車は、原告会社が昭和四五年五月三〇日に新車として、車両代金と登録等費用を含め六一万三八〇〇円で購入した車両であつたところ、本件事故のため右前側部が大破し、そのため修理費として四三万〇四二〇円を要するものと見積られ、しかもその修理によつて完全には修復しない見込みであつたため、原告会社は新車を買いなおした方が得策と判断して、丙車を大破のまま五万円で売却したうえ、同年七月二〇日同種の新車を購入したことが認められる。

右事実に照らし考えると、原告会社が丙車の修理を諦めて新車に買い替えたことは相当と認められ、そして本件事故が丙車を新車として購入してわずか約二〇日後のことであることを考えれば、このような場合には、新車を買い替えるに当り新たに出捐を余儀なくされた金額と右破損車売却代金との差額をもつて原告会社の損害とみるのが相当である(丙車の事故当時の価値を市場価格の面からみれば、約二〇日間の使用を無視しえないことは明らかであるが、使用者の使用価値の面からみれば、それはほとんど論ずるに価しないし、仮りにこれを微視的に論ずるとすれば、他方原告会社が本件事故より右買替えまでの間車両を利用できなかつた不利益もまた論ずべき筋合である。)。

そして<証拠>によれば、右買替えに当り原告会社が新たに出捐した金額は、車両代五一万四五〇〇円(なおこのうちには下取車一万円分が含まれているが、<証拠>と対比すると、右下取車は丙車以外の車両と窺われる。)のほか、強制保険料二万〇五五〇円、自動車税八三〇円、取得税一万五〇九〇円、検査登録関係手数料九〇〇〇円、下取手数料三〇〇〇円であるが、右のうち強制保険料および自動車税は、原則として車両の使用期間に対応すべきものであるから、これを損害額算定の基礎に加えるべきではない。

よつてその損害額は、右のうちその余の合算額金五四万一五九〇円から、前記破損車売却代金を差引いた金四九万一五九〇円となる。

(2) 原告古宮、同佐藤の休業中の給与支払い分

金一四万一四七八円

原告会社は、その代表取締役あるいは従業員である原告古宮、同佐藤が本件事故に基づく受傷のため労務を提供できなかつた分に対応する給与の支払いをもつて、原告会社の損害であると主張するが、このような場合、受傷による被害者は原告古宮、同佐藤のみであつて、原則として原告会社をその被害者とみることはできない。しかしながら、原告古宮、同佐藤は右受傷のため労働(労務提供)能力を失つた損害を蒙つたのであり、それにもかかわらずその給与を原告会社が支払つたときは、右原告両名の損害が填補されると同時に、これに相当する加害者に対する賠償請求権は、債務の第三者による弁済の場合に準じて、肩替りした原告会社に移転し、従つて原告会社は、右原告両名の有した加害者に対する賠償請求権の限度においてこれに代位してその賠償請求をなしうるものと解すべきであり、そして原告の本訴主張は、黙示に右の趣旨をも含むものと解することができるる。

そこで以下右の前提のもとに判断する。

(イ) 原告古宮分

<証拠>によれば、同原告は原告会社の代表取締役として、原告会社の経営を総括するとともに、販売、配達、集金などの業務に従事していたこと、その月額給与は一五万円と定められていたが、これは同原告の労務の対価分のみならず、同原告の経営主催者としての永年の功績と対外的信用に対するものも含まれていること、原告会社は同原告が主催し、これに同原告の妻および娘夫婦が協力して維持しているいわゆる個人会社で、労務の提供だけからみるとむしろ同原告の女婿泰造が中心的存在であるところ、その給与は月額一〇万円と定められていたこと、本件事故による前記受傷のため、同原告は、少なくとも原告主張のとおり昭和四五年六月二一日から同年七月一五日まで二五日間は全く右労務に服しえず、翌日から同月三〇日までの一五日間は平生の半分程度の労務にしか服しえなかつたこと、それにもかかわらず原告会社は同原告に所定給与を支給したことがいずれも認められる。

ところで右のような短期間の労働能力喪失による損害を評価するに当つては、その基礎としての収入額につき右給与のうち純粋な労務対価分だけを考慮すれば足りるものというべきであるから、右事実関係、特に泰造の給与額に照らし、月額一〇万円をもつて算定の基礎とするのが相当である。そして同原告の右休業の程度は、前認定の受傷および治療の程度に照らし妥当と考えられるから、同原告の受傷による労働能力喪失損害額は、左の算式のとおり金一〇万八三三三円と評価すべきである。

そうすると原告会社は右金額の限度で被告らに対し請求しうるものというべきである。 (浜崎恭生)

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